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<The Analysis of TEC 923 *** 923形解体新書 *** > |
2000年に老朽化した922形の置き換え用として開発された923形。21世紀の新たな新幹線電気軌道総合試験車には高度な技術がびっしりと詰まっている。先代の922形と比べると知名度もかなり上がった。DataBase内の『新幹線電気軌道総合試験車の誕生と変遷』で新幹線電気軌道総合試験車の大まかな歴史は紐解いたので、ここでは現役で活躍している923形T4、T5編成をもっと詳しく見てみようと思う。 |
T.これが923形Dr.Yellowだ! | |
T2・T3編成の後継車として造られた923形T4・T5編成。まず初めはその概要からみてみよう。下に923形の主な諸元を掲載しているので併せてご覧頂きたい。まず目につくのはやはり何と言っても270km/hという最高速度だろうか。300系の登場により270km/hでの営業運転が開始されると、500系・700系とそれを追う形で次々に新型車両が登場した。けれども、T2・T3編成の最高速度210km/h下において60km/hも差がある営業列車と同水準の数値を測定することは困難だったはずだ。それを思えば、270km/h検測や営業列車と同水準の環境での測定が可能となったのは非常に大きな意味を持つと考えて良い。また、日中の臨時ダイヤに乗って検測業務を行えるようになったことで、保線作業の効率化も図ることが出来たのではないかと思う。 |
← 博 多 | 1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | 5号車 | 6号車 | 7号車 | 東 京 → | ||
形 式 |
T4編成 | 923-1 | 923-2 | 923-3 | 923-4 | 923-5 | 923-6 | 923-7 | T4編成 |
形 式 |
T5編成 | 923-3001 | 923-3002 | 923-3003 | 923-3004 | 923-3005 | 923-3006 | 923-3007 | T5編成 | ||
寸 法 |
車両長 | 27350mm | 25000mm | 27350mm | 車両長 |
寸 法 |
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車体幅 | 3380mm | 車体幅 | ||||||||
車体高 | 3650mm | 車体高 | ||||||||
編 成 | 6M1T | 編 成 | ||||||||
車体素材 | アルミニウム合金製中空押出形材 | 車体素材 | ||||||||
台 車 |
方 式 | 空気ばね車体直結ボルスタレス方式 | 方 式 |
台 車 |
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形式(T4) | TDT204 | TTR8001 | TDT204 | 形式(T4) | ||||||
形式(T5) | WDT206 | WTR8001 | WDT206 | 形式(T5) | ||||||
軸 距 | 2500mm | 軸 距 | ||||||||
車輪径 | 860mm | 車輪径 | ||||||||
主 電 動 機 |
種 別 | 三相かご形誘導電動機 | 種 別 |
主 電 動 機 |
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冷却方式 | 強制通風 | 冷却方式 | ||||||||
出 力 | 275kW | 出 力 | ||||||||
数(編成) | 22基 | 数(編成) | ||||||||
集電装置 | ばね上昇式低騒音形シングルアームパンタグラフ | 集電装置 | ||||||||
制 御 方 式 |
主回路 | VVVF制御誘導電動機駆動制御 | 主回路 |
制 御 方 式 |
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ブレーキ |
回生ブレーキ併用 電気指令式空気ブレーキ |
電気指令式 ブレーキ |
回生ブレーキ併用 電気指令式空気ブレーキ |
ブレーキ | ||||||
保安装置 | ATC2周波方式 | 保安装置 |
270km/h検測を実現するにあたっての最も重要な課題は新型軌道検測装置の開発だったのではなかろうか。従来の922形では17.5mの車体に5m間隔で台車を履いて測定を行う3台車方式でだったが故に、210km/h以上の速度では走行が困難だった。それを2台車方式としたことで克服したのが923形の4号車、923-4或いは923-3004だ。 また、電車線関係の検測技術ではトロリ線に毎秒1500回ものレーザー光を照射し測定を行うことで従来より8mm程短い50mm間隔での測定も行えるようになった。電車線の高さも従来のパンタグラフ枠の角度から算出する方法が誤差範囲±10mmの精度だったのに対して、新たにレーザー光による測定方式としたことで±5mmの精度まで向上することに成功した。 その他、全項目において922形を上回る測定精度を確立した923形。東海道山陽新幹線の更なる安全性向上のために、周期的に走行しては保線作業にその結果をフィードバックしている。 |
U.923形各号車の役割 |
続いては、各号車が受け持つ役割について少し具体的に見ていこうと思う。付随車である4号車は軌道試験車、他は全て電気試験車だ。以下に各号車の大まかな役割分担をまとめてみた。 |
1号車 | 2号車 | 3号車 | 4号車 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分 類 |
電気試験車 | 電気試験車 | 電気試験車 | 軌道試験車 |
分 類 |
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形 式 |
T4:923-1 T5:923-3001 | T4:923-2 T5:923-3002 | T4:923-3 T5:923-3003 | T4:923-4 T5:923-3004 |
形 式 |
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役
割 |
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役
割 |
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5号車 | 6号車 | 7号車 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分 類 |
電気試験車 | 電気試験車 | 電気試験車 |
分 類 |
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形 式 |
T4:923-5 T5:923-3005 | T4:923-6 T5:923-3006 | T4:923-7 T5:923-3007 |
形 式 |
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役
割 |
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役
割 |
上の表からも分かるように、923形で行われている検測項目は多岐に渡る。信号状態の測定項目にはATC軌条電流の測定や列車検知軌条電流、ATC信号周波数の測定などといった項目がある。ATCシステムと、列車の在線を検知する列車検知システムは全て軌条に流した信号電流によって行われているため、これが正常でないと列車を走らせることが出来なくなってしまう。さらに、軌条には帰線電流なるものも流れており、これも左右均一でなくてはならない。そんな訳で、軌条に流れる電流を測定することは信号部門においては非常に重要な意味も持つ。 通信状態の測定項目では列車無線の雑音レベルや基地局の電波強度、構内無線受信電界強度などを測定している。電車線関係ではトロリ線の高さや摩耗状態、偏位や離線率等の測定が最も重要な項目である。レール面からの垂直な高さは5.0±0.1mが基本だそうだ。摩耗状態はトロリ線に1500回/秒のレーザー光を照射し、それを瞬時に画像処理することで調べている。 |
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これらの状態は2号車及び5号車の観測ドームからでも確認することが出来、ドーム内にはそれを記録する監視カメラも設置されている。 軌道検測では、2台車方式の採用により922形とは違った構造になっている。この方式では、2基の台車に取り付けられた測定枠の前台車先端から後台車後端へ張った弦によって車軸のずれを測定している。ただ、走行する台車で同時に測定を行うだけではずれも生じかねない。そのため、車体の長手方向にレーザーの基準線を通して補正を掛けることで誤差の発生を抑止する策を取った。 以上が、923形の各号車が受け持つ検測業務の詳細内容だ。本当はまだまだ細かく説明するべきなのだが、これ以上の詳細は内容が非常に専門的なものになってしまうので割愛させて頂くことにする。 |
V.923形Dr.Yellowの運行形態の推移 |
ここでは923形の運行形態について見てみよう。923形は270km/hでの検測が可能となったことで営業時間帯の臨時ダイヤに乗って走行することも出来るようになった。これにより1986年頃から続いてきた3日間の検測態勢は2日間へと縮んだ。T4編成が検測業務を開始した2001年からT3編成が2003年に検測業務を引退するまでは主に本線検測を受け持ち、約10日に1回の割合で走行していた。その運行形態を以下の資料に示す。 |
東 東 東 三 名 京 大 新 岡 広 博 博 二 一 古 一 大 総 京 両 両 島 屋 都 両 阪 山 島 多 車 |
編 成 |
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1日目 |
※3942A ┌──◯ │ ※981A └───────────────────┐ ※4944A │ ┌───┘ │ ※985A └────────────────△ |
T |
2日目 |
※984A ┌────────────────◯ │ ※4949A └───┐ ※980A │ ┌───────────────────┘ │ ※3945A └──△ |
T |
東京を発車したDr.Yellowは新大阪に到着すると回送線の検測を行うために一旦大一両へ入庫し、その後改めて山陽区間へと出向く。これは上りの時も同様で、博多から直接東京までは行かず、一旦大一両に入庫してから上京する行程だ。尚、この検測態勢はT5編成登場後の現在でも同じであるため、今も新大阪では走行日であれば1日当たり2回の遭遇チャンスがある。 また、923形の登場により検測に掛かる所要時間も大幅に減少した。次の資料は2003年春の923形の走行ダイヤである。因みに、上の電車運用からも分かることだが、Dr.Yellowの運行ダイヤというのは通常の検測業務ならば毎回決まっている。そのため、現在ではインターネットで目撃情報などを調べることによって事前に来る事を把握した上で待ち構えることも出来るようになった。 |
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2003年10月01日のダイヤ改正以降は、T3編成が完全な予備車扱いになったことで副本線検測もT4編成が担当することとなる。それによって副本線検測も2日間で行うことが出来るようになった。 |
東 東 東 三 名 京 大 新 岡 広 博 博 二 一 古 一 大 総 京 両 両 島 屋 都 両 阪 山 島 多 車 |
編 成 |
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1日目 |
※3942A ┌──◯ │ ※981A └───────────────────┐ ※4944A │ ┌───┘ │ ※5989A └────────────────△ |
T |
2日目 |
※5988A ┌────────────────◯ │ ※4951A └───┐ ※982A │ ┌───────────────────┘ │ ※3949A └──△ |
T |
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そんな923形だが、2005年秋には運行形態に若干の変化が生じた。先代の922形が完全引退し、T5編成が検測業務に加わったことによるものだ。これにより現在のT4・T5編成による業務体制が確立。約3ヶ月に1回の割合で検測業務に就く編成が交替し、交替前には休んでいた編成が検測機器動作確認の試運転を実施するというパターンが組まれた。しかし、走行距離の関係か何かで2009年02月現在では交替時期が周期的ではなくなっている。そのため、現在の交替周期は3ヶ月おきとは限らない。2008年内には3ヶ月以上片方の編成が検測業務を担当していたこともあった。尚、現在は本線検測を約10日に1回、副本線検測を約3ヶ月に1回の割合で実施する運行形態となっている。また、2008年には山陽区間における臨時の副本線検測も実施された。この時は東海道区間は臨時回送の扱いで走行したため、新大阪以東は通電ダイヤ、以西は停電ダイヤ…という何とも違和感のある組み合わせで走行していた。 | |
2008年10月27日には検測業務で下って来たT4編成と試運転で上京するT5編成が新大阪で並ぶという貴重なこともあった。本線上での離合はそれまでにも数回あったが、車両基地以外で923形同士が顔を合わせて停車するというのは恐らく史上初だろう。尚、この並びは年が明けた2009年01月25日にも再び実現しており、この時は下りがT5編成・上りがT4編成だった。2009年01月20〜22日には、博総車〜広運にてT5編成を使用した走行試験も実施され話題を集めた。 両者の諸検査事情としては、T4編成の初全検は2005年09月に、台検は2008年03月にそれぞれ浜工にて実施。T5編成の初台検も2007年08月に浜工で行われている。営業列車と違って検査周期が長いことから、入出場の記録は出来るだけ撮っておきたいものである。 |
W.あとがき | |
923形は1編成7両。しかし、その製造費は16両編成の営業車両とほぼ同じだと聞く。コストは倍だが、その分最新技術をとことん導入して造られた車両であるのは間違いない。そして、この923形がいるからこそ東海道・山陽新幹線は日々安全に多くの乗客を乗せて走ることが可能なのだ。彼らがいなければ、新幹線の安全性は保障されない。ただ、今後N700系が増備されていく中で彼らもきっと変化の時を迎えるだろう。東海道新幹線を走るのぞみはあと数年で全列車がN700系に統一される。その時に果たして一体どのような策が取られるのか。2011年に山陽・九州新幹線が全通した際にも検測業務の体制は変わるであろう。そういった意味でも、今後もこの923形兄弟からは目が離せないと私自身は考えている。 最後に1点。現在のDr.Yellowの運行ダイヤについての話題に触れておきたいと思う。 |
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今までもサイト内のメールフォームより時たまDr.Yellowの定例検測ダイヤについての質問が寄せられていました。けれども、残念ながら私にはお伝え出来ることは持ち合わせておりませんので、ご了承下さい。但し、JRからの公式発表ではないのですが、サイト内に設置してある目撃速報掲示板には多くの方々が目撃速報を提供して下さいます。従いまして、まだダイヤを把握されていない方もそちらを参考にして頂いて、是非この幸せを呼ぶ黄色い新幹線達に出逢って下さいね。 |
*** " The Analysis of TEC 923 " 終 *** |
※参考文献、参考サイト | ||||||
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